「致しかねる」といった言葉、ビジネスメールなどでよく使う言葉だと思います。
しかし、何気なく使っている「致しかねる」といった言葉、使い方が正解なのかいまひとつわかりにくい言葉とも言えます。
今回は、「致しかねる」の意味や例文とともに使い方をご紹介したいと思います。
そして、「致しかねる」と似た使い方とする言葉「出来(でき)かねる」との違いもお伝えします。
致しかねる(いたしかねる)の意味とは?
まず、「致しかねる(いたしかねる)」の意味ですが、
「致しかねる」は、「致す」と「かねる」の連語です。
「致す」といった動詞の連用形に続く「かねる」という言葉でできていることから考えます。
「致す」は、「する」の謙譲語です。
謙譲語は、自己側の動作を低めて言うことで聞き手に対する敬意を表すことばですね。
そして「かねる」という言葉ですが、
動詞の連用形に連なった場合の「~かねる」の意味は、大きく3つの意味合いがあります。
1.「~できない」という「不可能」であることという意味
2.「~することは難しい」といった「困難」であることという意味
3.「踏ん切りがつかない、決めかねる」といった「躊躇」する「という意味
です。
といったことから
「致しかねる」は、「することができない」「することが難しい」をへりくだった言い方(謙譲語)
であると言えます。
ちなみに「~かねる」は、できないことをソフトに伝える便利な言葉なのですよ。
語尾が「~ません」で終わるつよい否定形は、相手に不快感をもたれてしまう恐れがあります。
そこで、「~かねる」に言い換えます。
このような伝え方は、刺々しい言葉を柔らかくするのでクッション言葉といわれています。
致しかねるの使い方と例文
「致しかねる」の使い方ですが、
やはり、「できません」「することができない」といった意味のお断りの言い方の言葉として使います。
ビジネスなどで使うときには、「できません」といったストレートの否定の言い方では、お客様にとっては、きつい言い方になります。
こんなときに「致しかねます」という謙譲語を使った言葉を使うといったことです。
接客用語として適していますね。
例文は、
・残念ながらこの問題はお引きうけ致しかねます。
・私どもには到底使用致しかねる代物です。
・然るに未熟の考であって何にも未だ判断致しかねます。
・それは、こちらとしては賛成致しかねます。
といった使い方ができます。
「致しかねる」と「できかねる」との使い方の違い
では、「致しかねる」と「できかねる」の使い方の違いです。
「できかねる」という言葉の意味ですが、
こちらは、「出来る(できる)」と「かねる」が合わさった言葉ですね。
この「かねる」は、先ほどの説明の「~かねる」の意味の
1.の「~できない」という「不可能」であること
2.の「~することは難しい」といった「困難」であること
の意味する「かねる」であります。
「できる」と可能性を表すことばです。
それに否定の「かねる」がつくことによって
「~するのが難しい」、「できない」といった意味になりますね。
「何か事情があって(できない、難しい)」というニュアンスの
「~できない」「~するのが難しい」ということを、婉曲的に言うときに使います。
「できかねる」と婉曲にいうことによって、やわらかな表現になるように聞こえるため、店員さんがお客さまに使われることが多いですね。
しかし、「~かねる」に自体に敬語的な意味はありません。
もちろん、ビジネス敬語でもありません。
「できかねる」は、あくまで
「できる」と可能性を表すことばと
「~かねる」といった不可能を表すことばがあわさった言葉です。
「できる」ことが「できない」となります。
文法的には、少しおかしな表現ですね。
「できかねる」は、現在よく使われていることばですので意味も通じますし、間違いとは言い切れないところもありますが、
「する」+「かねる」=「しかねる」
といった方が正しい使い方といえます。
それに対し、「致しかねる」は、「致す」が「する」の謙譲語ですので敬語(謙譲語)になります。
といったことから、
自分をへりくだって相手に対し敬意を表す場合には、
「できかねます」ではなく「致しかねます」が言葉として適当
ですね。
ま と め
「致しかねる」の意味やと例文や使い方と「できかねる」との違いについてお伝えしました。
これらの言葉は、ビジネスや接客の際に使うことの多い言葉です。
同じような場面で使うことが多い「致しかねる」と「できかねる」ですが、「できかねる」は敬語的要素はなく、ビジネスの場面では「致しかねる」といった言葉を使う方がベターだということがわかりました。
ビジネスにおいての敬語のマナーはとても難しいです。
「致しかねる」と「できかねる」は、お断りをする際に使う言葉ですので特に神経を使わなくてはいけないシーンで使うことになります。
言葉の意味の違いをきちんと意識して使っていきたいですね。