「忖度(そんたく)する」という日本語があります。
「忖度」とは?といっても一言では言い表しにくく、言葉のニュアンスも伝えにくいし、日本語以外の言葉にも訳しにくい言葉の一つですね。
この「忖度」に似た言葉に「斟酌(しんしゃく)する」という言葉があります。
「忖度」と「斟酌」の意味の違いや正しい使い方や「忖度政治」といっことなどもお伝えしたいと思います。
忖度(そんたく)とは?
「忖度」とは日本語の意味も正確に記すのが難しいことばです。
辞書風に簡潔に意味を伝えるとすると
「他人の気持ちを推し量る(おしはかる)こと」
となります。
「推し量る(おしはかる)」といったことばを言い換えるとすると
「慮る」
「推測する」
「推察する」
「汲み取る」
「心中を量る」
「当て推量する」
「察する」
「類推する」
「推論する」
「推定する」
「臆断する」
といったようなことになるでしょうか。
ひとつひとつの言葉の意味はニュアンスがまた違いますが、
とにかく共通するのは
「(相手の)空気感を読んでいくこと」
ということですね。
こちらの方がわかりやすいかもしれません。
忖度(そんたく)すると斟酌(しんしゃく)するの意味の違いと使い方
「忖度する」という言葉に似た言葉に「斟酌する」といったものがありますね。
「忖度する」と「斟酌する」にどういった意味の違いがあるのでしょうか?
■忖度(そんたく)
先ほどいったように
【忖度】の意味は
「他人の気持ちを推し量る(おしはかる)こと」
です。
忖度の使い方は
・相手の真意を忖度する
といったような使い方になります。
■斟酌(しんしゃく)
そして
【斟酌】の意味ですが、
1.その時の相手の事情や心情をくみとることやくみとったうえで、程よくとりはかったり、手加減すること。
2.あれこれ照らし合わせて取捨すること。
3.言動を控えめにすること。遠慮すること。
斟酌の意味は酌という字を使っているとおり、水や酒をくみ分けるといったことからきている意味になります。
斟酌の使い方は1.~3.の意味別に
1.
・採点に斟酌を加える
・若年であることを斟酌して責任は問わない
2.
・市場の状況を斟酌して生産高を決める
3.
・斟酌のない批評
といったようなことになります。
■「忖度」と「斟酌」の違い
では「忖度」と「斟酌」の違いは結局どういったことになるでしょうか。
単に相手の心情を推し量るのが「忖度」。
「忖度」は、「忖」も「度」も、はかるといった意味です。
その「忖度」した(推し量った上)で、それらの状況を汲み取って何か処置をするのが「斟酌」
といったことになるのでしょう。
忖度(そんたく)政治とは?
「忖度政治」ということばをお聞きになったことはあるでしょうか?
あまり、日常で使うことの少ない「忖度(そんたく)」ということばですが、政治の世界では使い勝手のいい言葉になっているようです。
具体的な例としてよく知られているのが、民主党時代の小沢一郎議員にまつわる話です。
当時の小沢一郎議員は、民主党の幹事長をしてました。
その小沢一郎幹事長批判を同じ民主党の副幹事長の生方幸夫が記者にしたことがあります。
そして、そのことで副幹事長を解任されたのです。
この解任に関しては小沢一郎が直接指示を出したのではありませんでした。
側近がもし、小沢幹事長がそのことを知ったら激怒することを想定してそれより先に生方幸夫副幹事長を解任といった措置をとったということです。
これはその後、国民の批判により、撤回されます。
また、東日本大震災時の原発事故後の処理に対する「海水の注水中止」をめぐる首相の指示に関してもこういった「忖度」がありました。
「首相の了解が得られていない『空気』があった。」
というのです。
当時の首相菅直人氏の指示が明示的にあったわけではなく、連絡役として官邸に詰めていた東京電力の武黒(当時副社長)氏が「空気感を読んで判断した。」といったように「忖度」といった尺度で判断し、「忖度」よって行動していたことがあったのです。
この時は、結局現場の吉田所長の独断によって海水注入は続けられたといったことになります。
これも「忖度」によっての判断は吉田所長の英断によって結果はかわらなかったということですが、指揮命令系統が混乱しているといったことは間違いないです。
何かあった際には、実際に「誰が言った、言わない問題」になりうやむやになります。
このように政治の世界では、口にださなくても相手の気持ちを「忖度」してことが動くといったことが度々おこります。
そういった、「腹芸」や「みなまで言うな」的なコミュニケーションで成り立つ政治を「忖度政治」といつしかいうようになったようです。
ま と め
「忖度」の意味から「斟酌」との意味の違いや使い方や日本の政治で使われる「忖度政治」のことについて調べてみました。
日本語の意味は難しいですね。
「忖度」とは他人の気持ちを推し量る(おしはかる)ことでした。
なので、単に人の心を単に冷静な目で推し量ることや、推察する、推測する、推量することを指すのととばであり、「斟酌」するといったことのようにその推し量ったうえで気遣うことといった意味はないようでした。
そういった意味からは、先日、森友学園問題で松井大阪府知事がいったことばの「忖度」とは「慮る、気を使う」というのは少し違っていて、どちらかというと「斟酌」よりな意味になるのではと思いました。
「忖度政治」というのは、誰に責任があり、誰の判断が働いたのか、まったくわからなくなる可能性が多く、問題も多いと思います。
しかし、「忖度」は日本人の言葉に出さなくても心中を察するといったいい点もたくさんある言葉です。
ただ、推し量るといったことだけで他人の気持ちを正確に察するのは難しところもあるので気をつけたいですね。