日本語には同じ読み方で違う意味を持つ言葉がたくさんあります。
その一つが、「醒める」、「覚める」、「冷める」です。
全て「さめる」と読みますが、いざ文章を書くときにどっちだったかなと悩んでしまいがちです。
日本人で悩むのだから、外国人にとっては難題です。
そんな「さめる」について、
「醒める」と「覚める」、「冷める」の意味の違いと使い方や類語
「よいがさめる」、「気持ちがさめる」、「興がさめる」の漢字は?など
それぞれの意味や使い方などについてご紹介します。
「覚める」と「醒める」意味の違いや使い方は?
「よいがさめる」、
「気持ちがさめる」、
「興がさめる」の漢字は?
といわれると
「覚める」と「醒める」ってどちらの漢字が
適当なのかわからなくなることありませんか?
「覚める」と「醒める」は、
少し迷いやすい漢字です。
そもそも
「覚める」「醒める」
には意味の違いがあるのでしょうか?
見ていきたいと思います。
■「覚める」の意味とは?使い方や類語
まず、「覚める」とはどのような意味なのでしょうか。
「覚める」の意味は、
眠っていた状態から意識のある状態に戻ること。
現実に戻るといった
意味です。
ですので、
「覚める」使い方はというと
「目が覚める」
「夢から覚める」
「眠気が覚める」
といったことになります。
この意味からすると
類語は、「起きる」といった言葉になりますね。
「覚」の意味から考えると
そもそも「覚」の漢字には、このような意味があります。
①外から来るものに触れて意識が起こる
といったことです。
その意味から
「感覚」・「幻覚」・「錯覚」・「視覚」・「触覚」・「知覚」・「聴覚」・「味覚」
といったような言葉があります。
②今までわからなかった道理や意味に気づく
といったことです。
その意味から
「自覚」・「正覚」・「先覚」・「直覚」・「不覚」
といった言葉があります。
③人に気づかれる
その意味からの使い方は、
「発覚」
です。
そして、
④ 眠りから目ざめる
ですね。
その意味からの使い方は、
「覚醒」
です。
■「醒める」の意味とは?使い方や類語
そして、
「醒める」の意味は、
①酒などに酔った状態から正気に戻ること。
②心の迷いから脱却して正常な状態になること。
③高ぶった感情が落ち着くこと。
④興味が薄れること。
です。
使い方は、
「酔いが醒める」
「一時の迷いから醒める」
「収集癖が醒めた」
といったことになります。
類語はというと
「覚める」「目覚める」
です。
「醒」の意味から考えると
「醒」の漢字は、
酔いや眠りからさめるといった意味で
「覚醒」「警醒」「半醒」
と使います。
こうみるとわかるように
「覚める」と「醒める」は、
もともとの漢字の意味は少し
違うところもあるのですが、
「さめる」の言葉の意味する、
具体的に目がさめるといった意味と
「目がさめる」といった言葉が
比喩的表現での気持ちや感覚の部分を
表すことばの意味とで
使っていることから
ほとんど同じ意味になってきています。
「覚醒」といった
「覚」「醒」の両方の漢字が入ったことばの意味も
①目を覚ますこと。
目が覚めること。
②迷いからさめ、過ちに気づくこと。
といった意味になっています。
「覚める」は常用漢字
また、
「覚める」は常用漢字ですが、
「醒める」は常用外の漢字です。
※「醒」は平成22年の常用漢字表の改定で追加された漢字です。
ただ、音訓欄には「セイ」しか掲げられないのです。
ですので、「醒める」は、
役所の書類などの公用文、公教育など
正式な文書には使えない漢字です。
ですので、
「醒める」の漢字を使うところに
酔いや眠りから「さめる」
には「醒める」ではなく、「覚める」を使っても
間違いではないということになっています。
小説や日記など公文書でない文には、
どちらを使ってもいいことからどちらの漢字もみかけます。
といったことなどから、
もともとの「覚」と「醒」の漢字には意味の違いがあるのですが、
「覚める」と「醒める」は同じ意味で使われることが多いのです。
■「覚める」と「醒める」の違いは?
では、「覚める」と「醒める」はないのかというと
「醒める」の方が、
③高ぶった感情が落ち着くこと。
の意味があったことからもわかるように
極端な状態「酔い」や「興奮」の状態から普通の状態に戻る
といた意味合いが強くなります。
「冷める」の意味とは?使い方や類語
では、「冷める」について説明します。
「冷める」の意味は、
①熱いものが放置されて温度が下がること。
②高まった感情、気持ちが薄れること。
です。
使い方は、
「ご飯が冷める」
「コーヒーが冷める」
「ほとぼりが冷める」
「興が冷める」
といったものになります。
類語は、「醒める」となるので
これもややこしいですが、
この「さめる」も
「醒める」の意味である
③高ぶった感情が落ち着くこと
「冷める」の意味である
②高まった感情、気持ちが薄れること。
からきています。
「冷える」は、ニュアンス的には、
興奮状態である熱い状態から
落ち着く、冷めるという意味合いで使われます。
このようにひと言に「さめる」と言っても
その時の状態や意味合いにより漢字は微妙に異なります。
では、迷いやすい
「さめる」について具体的に
どの漢字を使うのか見ていきましょう。
「醒める」「覚める」「冷める」どの「さめる」を使う?
■「酔いがさめる」
まず、迷うのが
「酔いがさめる」
です。
この場合もともとの意味からいって
「さめる」は「醒める」を使われることが多いです。
酔っている状態から正気に戻るので、この「醒める」が適当だということです。
しかし、先ほどもいったように
常用漢字である
「覚める」を使っても間違いではありません。
■「気持ちがさめる」
この場合は「冷める」です。
高ぶっていた気持ち、感情が落ち着くことを意味しているので迷いますが、
温度や高ぶりが「冷める」
ということでこちらが適当です。
■「興がさめる」
この文章の意味は
「盛り上がっていた雰囲気や興味が失せる」ことを指します。
このことから「冷める」が適当ですが、
「醒める」も使えるようです。
「醒める」は
「正気に戻る」ことを指すといいましたが、
「興に入る」とは
「面白くて夢中になること、興味を持つこと」を指します。
そして「興味を薄めること」を「醒める」と言います。
このことから「興が醒める」も適当なようです。
「褪める」も「さめる」
ちなみに「さめる」には「褪める」もあります。
これは「色褪せる」という漢字に使われるように、
「色があせる」ことを指します。
使い方は
「表紙の色が褪める」
「着古して色が褪める」などと使います。
このように意味によって感じが異なるものの中でも
「さめる」はどちらも使えたり、
ややこしい言葉です。
文章の意味合いを考えるとどの「さめる」が適当かわかってくると思います。
ま と め
「醒める」、
「覚める」、
「冷める」は
同じ読み方で類語なので、
ついつい間違いやすい言葉です。
「覚める」と「醒める」は、どちらを使っても問題ない場合がほとんどですが、
もともとの使う意味を知っておくことで、文学作品などのその漢字を使っている
意味がわかりやすいですね。